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サボテンとサティ
「Let's SATIE!」
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サボテンのカセット「レッツ・サティ!」【「LET'S SATIE!」】  宮川いづみ
数年振りにこのテープを聴いて、ふと、クセナキスの「音の雲」という言葉が浮かんだ。
確か、乱数を使って作曲されたその難解な作品は、スコアも膨大な音符の集合で、まるで雲のようだったが、不思議にその響きは、見上げる空を感じさせた。

このテープは、狭いスタジオでの練習を録音したもの、またライブで演奏されたものの中から、あの時、あの場所でしかできなかったベストチョイスであり、私たち自身も意図せずに生まれた様々なイメージを伝える、音の雲である。
B面の「タンゴ」は、何故かいつも3回演奏する。1回目、2回目とだんだんテンポを上げて、「3回目はうんと速くね!」なんて、ちっとも速くなってない。
けれども、私たちは3回演奏することに意味があると考えている。
A面「ゴルフ」も3回演奏される。
確かに、だんだんじょうずに演奏できているし、ロルのサックスも3回目には、曲のタイミングがわかってきて、サボテンの訥々とした響きを包み込むようにやさしい。

実はサボテンは秘かにインプロビゼーションに憧れている。
「顔から火がでそうなほど恥ずかしい」と自ら語るとおり、その自虐的なインプロビゼーションは長くは続かない。だが、この不自由な インプロビゼーションは、全体の中のコントラストとしてではなく、むしろ淘汰されたサボテンの残像に近い。
しかし、他のほとんどの曲は、スコアに書かれ、何回も練習を重ねて演奏されている。
同様に、サティの曲も忠実に演奏することを目的としている。
サティのそのタイトル、書き込まれたことばには、他者の解釈を許さない意味づけがなされているように受け取れる。が、その反面、音そのものの響きをまっすぐに伝えたいというパラドックスを、サボテンはピアノによる再現より、いっそうリアルに体現化する。
そして、その響きのもたらす受け取り手の自由な発想は、繰り返すテープのノイズとともに、あらたな雲となり、より強いイメージへと還元させ、そのもの自体が浄化されていくのだ。
補足「LET'S SATIE!」   松本里美


A面は1983年に早稲田大学で行われたサックス奏者ロル・コックスヒルとのセッションのライブ録音で、のちにフランスでリリースされた「サティーズカンパニー」に納められた「スポーツと気晴らし」の中の「RACE(競馬)」、同時に録音された「GOLF」「SWING(ブランコ)」 が収録されている。
B面は「スポーツと気晴らし」より「食欲をそそらないコラール〜インプロビゼーション」「TANGO」「ヨット」「海水浴」、オリジナルで「エテンラク」(ライブ)、「ジュ・テ・ヴ」が収録されている。
「食欲をそそらないコラール」は松本の12弦ギターの多重録音のあと爆発的インプロビゼーションとなる。「ヨット」は最初に宮川がスコアどおりピアノで弾き、続いてサボテンの演奏がフィードイン。「海水浴」も宮川のピアノ演奏。最後に入っているあまりにも有名な「ジュ・テ・ヴ」は非常にゆっくりと演奏されているが、勿論スコアどおり。多少のずれやミスタッチは全体のおおらかさとおもしろさに何の違和感も生じていない、とそんなに本人気にしていない。実は宮川は、85年ジョン・ケージの「WINTER MUSIC(20台のピアノによる20人の演奏)」という楽しい演奏会に唯一ロックアーティストとして参加している強者なのだ。《音楽家 (山下洋輔や島田璃里)と非音楽家(中原佑介-美術評論家、藤富保男-詩人)などが参加。レコードになっている》この
「LET'S SATIE!」のテープで宮川のクレバーでさわやかな演奏が聴ける。

このカセットは、日本カセットテープレコーヂングより通販されているもので、 1000円で購入可能です。 ぜひ一聴していただきたい。

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